2009年7月5日星期日
送元二使安西 王维
2009年7月4日星期六
2009年7月2日星期四
2009年6月13日星期六
2009年5月26日星期二
三島屋変調百物事続 2 宮部みゆき
人は、身体を動かしていると物思いを忘れる。だからこそおちかは働きたがったのだし、同時にそれは厳しく躾けられ使われる事によって己を罰したい、罰してほしいという切実な願いでもあったろう。伊兵衛とお民は、くどくどとおちかを説いたり、腫れ物に触れるように扱ったりはしなかった。苦労者のこの夫婦には、そんな振る舞いは空しく(むなしく)、最初から通じやしないと分かっていたからである。
夫婦はおちかの望むように、女中として働かせる事にした。どうしたっておちかのつらい過去を詮索(せんさく)したがるであろう口さがない若い女中たちには暇を出し、物慣れた女中頭のおしま一人を残して、おちかがせいぜい忙しがれるような舞台まで整えてやった。こんなときには、本人がしたいようにさせるのが一番の薬だ。
このごろお民は、おちかが闇雲に吉助の後を追ったりせず、我が身を攻めるあまりに病みついたりもせず、事のおこった場所を離れて江戸へ出てきた事を、大手柄だと考えていた。どうしてなかなか、この娘は芯がしっかりしている。いっそしぶといと言ってもいい。それはまったく、悪い事ではない。
悲しい事があったからといって、その度に死んでいたら命がいくつあったって足りない。おちかの身におこった事は度はずれた不幸だが、不幸比べをするのなら、世の中にはもっと過酷な事だってあろう。それでも生きていくのが人という物だ。おちかなら、きっとそれを体得する日が来るだろう。
一方の伊兵衛は、叔父が年若い姪を案じている訳だから、さすがにお民ほど剛胆(ごうたん)には割り切れない。この辺りが男と女の差でもある。磊落(らいらく)なふうを装ってはいても、思い詰めたようにきりきり働いて日々を過ごすおちかを見れば、彼の胸は傷んだ。
何かもう少し、してやれる事はないか。そんな折、たまたま伊兵衛の招いた客を、おちかがもてなさねばならぬことがあった。夫婦によんどころない急用が起ったからである。客は、伊兵衛の碁敵であった。
2009年5月24日星期日
日语学习角
三島屋変調百物語事続 1 宮部みゆき
袋物屋の三島屋は、江戸は信田、筋違御門先の三島町の一角にある。
町の名前をそのまま店名にしてる所からも容易に知れるが、主人の伊兵衛が振り売りから一代で興した店だ。それでも、看板を揚げて十年を経て、昨今は袋物の二つの名店、池の端仲町のえちかわ(越川)、本庁二丁目の丸角に続いて指を折られるほどの隆盛ぶりで、店構えこそ小振りな物の、市中の粋人たちにはよく知られる店となった。
この繁多な店に、この年の秋の初め、伊兵衛の姪のおちかという娘がやってきた。年は十七、伊兵衛の兄の一人娘で、実家である川崎宿の旅籠(はたご)「丸千」から、行儀見習いの名目で、伊兵衛と彼の女房お民の元へ託されてきたのである。
本来、裕福な商家が親戚の娘を行儀見習いに預かるというならば、嫁入り前のその娘を江戸の水で磨いてやるのが筋であり、歌に踊りにお茶お花と、習い事をさせるのは勿論、芝居見物や神仏詣での物見遊山さえも見聞を広める事のうちに入る。しかし、おちかは女中のように働く事を望んだ。忙しく、身を粉にして働く毎日をおくりたい。実家の丸千でも、決してお嬢様暮らしをしていた訳ではない。旅籠という商いはそういうものだ。だから働く事には身がなじんでいる、と。
伊兵衛とお民にも、おちかの気持ちはよく分かった.まだ色香の匂いも薄いこの姪が、一人で江戸へ出てくる事情になった事情だったからである。
おちかは、吉助という幼馴染みの許嫁を失ったばかりだった、尋常な死に方ではなかった。殺されたのだ。しかも下手人は、おちかが幼い頃から兄弟同様に親しんで一つ屋根の下に暮らしてきた男であり、その男松太郎は、吉助を手にかけた直後に己の命も絶ってしまった。
嫉妬と失意と傷心が引き起こした悲劇である。おちかは心底(しんてい)打ちのめされ、一人生き残ったと言う咎に、我と我が身を責めさいなんでいた.伊兵衛とお民が秋の到来とともに迎え入れたのは、そういう、暗い影に包まれてにこりともしない娘だったのだ。
振り売り/ふりうり 货郎,走街串巷叫卖的商贩
興す/おこす 兴办,创办,振兴
昨今/さっこん 最近,近来 就是最近的事/つい昨今の事
粋人/すいじん 多才多艺的人,通晓人情世故的人
繁多/はんた 纷繁
物見遊山/ものみゆさん 游山玩水
女中/じょちゅう 女仆,女服务员,保姆, 雇佣保姆/女中を置く
商い/あきない 买卖,生意
色香/いろか 美色
許嫁/いいなずけ 未婚妻,未婚夫
下手人/げしゅにん 凶手,杀人犯
打ちのめす/ 打倒,打得起不来。 给予严重打击,打垮
咎/とが 过错,错误。 罪过。 缺点。
責め苛む/せめさいなむ 痛加申斥,百般折磨。